メキシコのアーティスト、ペドロ・レイエス(Pedro Rayes)によるアートプロジェクト「Disarm」。
“武装解除する”という意味のこの作品は、
様々な経緯を経てメキシコ軍が保管していた武器やそのスクラップを使って楽器を作り、
ジョン・コックソン(John Coxon)によるオリジナルの楽曲を自動演奏するアートだ。
今回、ロンドンのLISSONギャラリーでは、自動演奏の他に、
ジョン・コックソン率いるミュージシャンたちによるフリージャズセッションが公開され、
その模様がyoutubeにアップされているのでご紹介。
ペドロ・レイエス(Pedro Rayes)は、彫刻や建築、映像、パフォーマンス、参加型の活動によって、
社会や環境、教育の分野において、個人や個人が集合した時の力の作用を訴える作品を作っている。
この「Disarm」は、「Imagine」(2012年)に続く、彼の”武器を廃して楽器とする表現活動”の第2弾。
もともとは2008年に「Palas Por Pistolas」、銃のためのシャベルというプロジェクトを行い、
当時、メキシコ西部で非常に多発していた銃による殺人犯罪に一石を投じたことに起因する。
市民から自発的に銃を提供して貰い、それをシャベルに変えるこのプロジェクトが訴えたのは、
犯罪のために銃を保持するだけでなく、犯罪から身を守るために銃を保持することが当たり前とされる
銃社会において、武器を放棄して、それを労働の道具へと変えることで、社会は変わる。
暴力に怯えて生活をする世の中ではなくなる。そのために勇気を出そうということであった。
「Palas Por Pistolas」から5年。「Disarm」で作られた音楽がうたうのは、
“It’s a requiem for all the deceased victims of violence.”
「暴力の犠牲になって亡くなった全ての方への鎮魂歌。」
である。
「Disarm」によって生まれた楽器の紹介が別の映像になっている。
ジョン・コックソン作の楽曲の自動演奏もチェックできる。
メキシコ含め、銃や武器の保持が権利として認められている国はまだまだ有る。
そういう社会に生きる人たちの意識や考えを変える動きは道半ばだ。
「銃なんて棄てて、平和で生産的な社会を目指そう」、
「銃を棄てることで社会のパラダイムは変わるんだ」、
そんな言葉は残念なことに通用しにくいのかも知れない。
少なくとも、銃の無いこの世の中に生まれ育った僕には、
自分自身で身を守らなくてはいけないがために銃の保持が認められた世の中で
生きる人々の葛藤のすべてを思い量る言葉は解らない。
しかし、そこにアートという非言語表現の力が発揮し得るのか、どうか。
それを応援しながら、非言語コミュニケーションの可能性を僕自身、もっと探りたいと思った。
参考)
「Palas Por Pistolas」
http://www.pedroreyes.net/palasporpistolas.php?szLang=en&Area=work
「Imagine」
http://www.pedroreyes.net/imagine.php?szLang=en&Area=work
「Disarm」
http://www.pedroreyes.net/disarm.php?szLang=en&Area=work
「Wikipedia:Pedro Reyes」
http://en.wikipedia.org/wiki/Pedro_Reyes_(artist)
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