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聖地巡礼

長野県中野市は、日本の音楽にとって重要な地、歴史的聖地のひとつだと僕は思う。

童謡「故郷」の原風景1

8月5日から6日にかけて、長野県中野市へ行って来た。

初めて赴いたのは、丁度3ヶ月前の5月6日。
忘れられた被災地こと、長野県栄村を訪れた時のことだった。
その時の報告は、こちら
その時の振り返りからお話させていただこうと思う。

* * * * *

栄村の視察もほぼ終えて、iPhoneでググりながらカーナビで周辺を探索していたところ、
あの童謡「故郷」の作詞家、高野辰之の生まれ育った”故郷”を発見。

僕自身、名曲「故郷」が大好きであるということに加えて、
仙台、陸前高田、栄村と、状況は様々なれども、
そこに住まう人々のあらゆるものを破壊した3.11の衝撃を現地で目の当たりにする中、
何だか、心の拠り所が欲しかったように記憶している。僕は「故郷」の”故郷”へ足を向けていた。

栄村までの元来た道とは真逆の方角へ進むことになったので、
少し足を伸ばして立ち寄ってみるレベルではない旅程の変更だったが、
何かに突き動かされてか、一旦は帰り始めた元来た道を、
Uターンして、再度、栄村を抜けて、西へ向かった。

ただ、中野市永江に到着した頃はもう夕刻で、博物館も閉まり、
本当に「故郷」の夕暮れを体感しただけではあった。
(それでも、橙色から群青、そして漆黒へ変わって行く故郷の春に感銘を受けたことは変わりない。)

* * * * *

しかし、それからが面白いもので、
その後の6月6日に監督からお呼出をいただいて、
(これも丁度1ヶ月後だった事に、今スケジューラを見て気づいた)
担当することが決まった作品の関係で、
もう一度、高野辰之の故郷を訪ねて、きちんと勉強する必要性を感じるようになった。

そして、改めて、長野県中野市について調べてみると、

高野辰之:
国文学者、作詞家。
東京帝国大学(現東京大学)、東京音楽学校(現東京芸術大学音楽学部)で教鞭をとりながら、
教科書編纂に携わり、自ら唱歌や物語を作る。
代表作は、「故郷」、「朧月夜」、「もみじ」、「春がきた」、「春の小川」など。

彼だけでなく、
日本のフォスターと呼ばれ、童謡・唱歌を数多く残した大作曲家、中山晋平の故郷も
この長野県中野市であった。

中山晋平:
作曲家。
数多くの童謡・流行歌・新民謡などを作曲。
東京音楽学校時代には、高野辰之からも指導を受ける。
代表作は、「シャボン玉」「あめふり」「証城寺の狸囃子」「こがね虫」「肩たたき」「兎のダンス」「東京音頭」など。

そして、さらに調べてみると、現代の巨匠としては、久石譲氏も長野県中野市出身とのことではないか。

もちろん、日本の音楽界は歴史的にも、沢山の才能に溢れているし、
長野県中野市は、幾度かの市町村合併を繰り返して今のようになっている事を考えると、
さほど特筆するような話でも無いのかも知れないが、
それでも敢えて書きたいと思ったのは、この3人を輩出した環境は、
空気に叙情が滲んでいるような土地柄であると感じたからである。

このことは実際に現地に行ってみればきっと体感できると思う。

千曲川が醸成してきた長野盆地の大地と四季折々の景観や、
人々の生活とそこから生まれる文化の素地を思えば、
3人もの巨匠がこの地から生まれた事も単なる偶然ではないかも?と思えてしまうのである。
千曲川は、農耕的な意味だけではない、文化的にも肥沃な地を作って来たのだと思う。

童謡「故郷」の故郷は、僕にとって聖地であり、
日本の歌の歴史的な聖地でもある。

今回の聖地巡礼は、高野辰之記念館中山晋平記念館を巡り、それぞれ1時間以上かけてじっくり見学。
それとともに、「故郷」に描かれた風景を始めとして、日本の童謡・唱歌が生まれた素地・片鱗を体感できた旅だった。

いずれは、「故郷」の作曲者であるとされる*、岡野貞一の出身地、鳥取県鳥取市にも伺いたいと思う。

* 古くからある童謡は、太平洋戦争以前に、文部省唱歌(尋常小学校唱歌)として、
 教科書の編纂にあわせて作られたものも多い。そういったある意味、国策で作られた楽曲は、
 戦後、著作権法の改正が行われるまで、作者は完全に伏せられており、
 戦後、作者自らが名乗り出たり、何らかの資料文献などを手繰ることで明らかになってきたようだ。
 従って、作者が自ら名乗り出なかったり、明確な資料が残っていないものは、
 未だ確証が無かったり、学術的実証がこれから行われるものも少なく無いようだ。
 しかし一般的に、「故郷」は岡野貞一の作曲とされているし、多分そうだろうと思う。

「兎追ひし かの山」のひとつ大平山と、「小鮒釣りし かの川」こと斑川(千曲川の支流)と、田園風景。

童謡「故郷」の原風景3

童謡「故郷」の原風景4

高野辰之記念館 長野県中野市の史跡地図

高野辰之記念館 旧永田小学校

童謡「故郷」の原風景2

最後の一枚は、高野辰之が通った旧永田小学校の裏から、かの山とかの川をのぞんだものである。

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